東京のエプロン屋

タブリエつくってます

作業所のはたらきもの

お陰様で無事に新年を迎えることができました。

精練と染色工程が滞り新しい生地の入手ができずにいますが、

海外工場へ一度輸出した生地を逆輸入したり、

市販されている無地のナイロンタフタを組み合わせたりと、

制限あるなか工夫をして需要にこたえられるよう取り組んでいます。

 

実はリーマンショック~東北大震災後にかけて

モノづくりができなくなる経験をしていまして、

今回の(原料入手ができない)ケースとは異なるのですが、

やはり、いや今以上に路頭に迷った期間が数年ございます。

その時期、私がとった行動はひたすらに歩くこと。

毎朝早朝に起きて自宅から事務所へおよそ7キロ、

夕方は日課にしている水泳に目黒か砧のプールまで5~8キロ、

そこで泳いでから帰宅までと延べ概ね20キロちかく、

1日の4~5時間は歩いたり泳いだり。

そんな生活を5年ほど続けていました。

正直なところ、それくらいしかできることが見当たらなかったのですが、

商売基本は体力勝負、いつかトンネルを抜けたときに

先ずもって必要になることは”元気でいる”ことなのです。

 

余談ですが距離感というのは数か月も続けると

それが日常の行動範囲=物差しとして身につきます。

これは学生時代、陸上部にいて長距離部(私は短距離)の出場する駅伝試合で、

他校にいたアフリカからの留学生ランナーの話を聞いたとき、

「この距離(17~22キロ)というのはコンビニに買い物へ行く感覚なんだよ」

ということを耳にして驚愕しました。。。

 

毎日歩くと当たり前ですが交通費が確実に浮きました。

僅かなようですが、でもよくよく考えるとその時間労働に就いて、

うちみたいな零細企業が純利として稼げるかどうかのラインです。

すくなくとも消費をするよりは余程身のためになるなと感じました。

 

そんな過程を経て、自前の国内作業所をふたたび持つこと、

自分ひとりでもモノづくりを成り立たせること、

停電でも足踏みミシンで、、、といった現状に至るわけです。

 

前置きながくなりましたが、

年末に間に合わなかったお仕立て作業をしている傍ら、

手近なところで感心したはたらきものをご紹介。

 

〇湧水

お預かりした修理品を解す前と後、作業所内にある湧水に数日間晒しますと、

タフタの目詰まり、経年使用で生地にかかったバイアス(特に縦方向)が整います。

 

〇みかんの皮

もみもみしてハンドクリームとして使っています。

作業所のある松本は非常に乾燥していまして、

加湿器を回したり湿度の下がりづらい灯油の暖房にしても間に合いません。

タブリエに使われているナイロン繊維はストッキング並みに極細ですので、

指先の手荒れでも端布から経糸がつられてしまいます。

縫製作業をするときにハンドクリームを使うわけにもいかず、

以前は濡れたタオルで手を湿らせながら縫ったりしていたのですが、

いろいろと試した結果、これにたどり着きました。

ほどよい摩擦係数が得られて手先作業をするかたにお勧めです。

 

自分の足で移動して、自分の手でつくる。

結果、身の回りにあるものの使い道が開けてくるものです。 

限られた時間、あるもの工夫して豊かな1年にしてゆきたいですね。

本年もよろしくお願い申し上げます。

 

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